【5】システム開発局面の監査の視点と課題
黒田 賢三(さくら総合研究所)
(システム監査技術者試験受験用テキストその2)
1.システム要件設定局面の監査
システム要件を設定するプロセスが適切なコントロール下にあるか、また、その結果もユーザのニーズに照らして妥当なものかを評価する

(1)システム要件設定局面の概要
システム要件は、経営者と利用部門によって承認されることで確定する
(2)システム要件設定局面における監査の目的
 1.システム要件を導くまでの問題解決の過程が合理的であることを確認する
 2.経営管理上の問題、課題が明確に記述され、その改善案が正しくシステム要件として設定されていることを確認する
 3.ユーザニーズが明確に記述され、システム要件に正しく反映されていることを確認する  4.費用効果分析が実施され、合理的であることを確認する
 5.システムを脅かす種々のリスクに対するコントロールが考慮されていることを確認する
(3)システム要件設定局面の監査の視点と課題
監査の実施により確認すべき事項をあらかじめ監査手続書として具体的に設定しておく必要がある
 1.データ及び処理の正確性、安全性確保の要件
 2.監査証跡の要件
 3.処理の継続性の要件
 4.コンピュータ資源の保護に関する要件
 5.ユーザ満足度に関する要件
 6.採算性の分析と評価

2.システム設計局面の監査
(1)システム設計局面の概要
ユーザとの密接な連携が必要
システムのコントロール機能が具体的に決定する
(2)システム設計局面における監査の目的
 1.アプリケーションシステムのリスクを認識する
 2.設定されたコントロールがアプリケーションシステムのリスクを低減し、コントロール機能として適切か評価する
 3.アプリケーションシステムが開発方針、開発手続、開発標準および関連法規に準拠していることを確認する
 4.アプリケーションシステムが完全にドキュメント化されていることを確認する
 5.アプリケーションシステムによって経営管理上の問題点が解決されることを確認する
(3)システム設計局面の監査の視点と課題
 1.データ及び処理の正確性、安全性確保に関するコントロールの設計
 2.監査証跡を確保する設計
 3.処理の継続性に関する設計
 4.コンピュータ資源の保護に関する仕様の決定
 5.ユーザ満足を得るための設計
 6.設計段階における採算性の評価

3.プログラミング局面の監査
(1)プログラミング局面の概要
システム設計書に示された仕様通りにプログラミングされたかどうか確認する
(2)プログラミング局面における監査の目的
 1.システムのメンテナンスが容易かどうか確認する
 2.システム設計仕様がプログラムに組み込まれていることを確認する
 3.プログラム標準、諸手続に準拠していることを確認する
 4.プログラムが信頼しうる程度までテストされていることを確認する
 5.プログラムドキュメンテーションが整備されていることを確認する
(3)プログラミング局面の監査の視点と課題
 1.データ及び処理の正確性、安全性確保に関するコントロールの組込
 2.監査証跡を確保する能力の組込
 3.処理の継続性を確保するための評価仕様
 4.コンピュータ資源の保護機能の組込
 5.ユーザ満足を得るための機能の組込
 6.プログラミング段階における採算性の評価

4.システムテスト局面の監査
(1)システムテスト局面の概要
システムテスト計画書、システムテストデータ、システムテスト結果、オペレーション部門のテスト結果報告書、ユーザ部門のテスト結果報告書を検証することで、適切なシステムテストが計画され、それが実施されたことを確認する
(2)システムテスト局面における監査の目的
 1.適切なシステムテストが計画され、それが実施されたことを確認する
 2.ユーザがシステムテストに直接参加し、合否判定をするに十分なテストを行ったか確認する
(3)システムテスト局面の監査の視点と課題
 1.データ及び処理の正確性、安全性確保に関するテスト
 2.監査証跡のテスト
 3.システム復旧計画のテスト
 4.アクセス違反のテスト
 5.ユーザ満足の確認
 6.採算性の確認

5.移行局面の監査
(1)移行局面の概要
移行計画、移行システムフローチャート、移行プログラムリストとドキュメンテーション、プロダクションプログラムライブラリ登録指示書、ジョブ制御ステートメント登録指示書、オペレーションマニュアル、ユーザマニュアル、システム運用教育プログラムを検証する
(2)移行局面における監査の目的
 1.移行計画、移行手続あるいはいこう作業結果をレビューして、新システムの運用開始により業務が整合性を保って継続できることを確認する
 2.移行過程の諸手続をレビューすることで移行手続事態の信頼性を確認する
(3)移行局面の監査の視点と課題
 1.移行データ及び処理の正確性、安全性
 2.移行時の監査証跡の確保
 3.旧システムの完全保存
 4.移行時のコンピュータ資源の保護
 5.移行計画の有用性
 6.移行予算設定