『FAシステムにおけるシステム監査の考察』 〜監査ポイントと着眼点〜
神尾 博(システム監査技術者,技術士=情報工学)
付録:「FAシステム簡易用語集」

本稿は、比較的「FA」になじみの薄い方向けに作成した。 説明はJIS等の規格を引用をしながらも,出来る限りわかりやすいように補足してい る。
なお、「わかりやすさ」を重視したため,厳密な意味での「正確さ」に関しては多少問題 があるかもしれないことをお断りしておきます。

「CIM」:Computer Integrated Manufacturing JISによると「生産に関係するすべての情報をコンピュータネットワーク及びデータベ ースを用いて統括的に制御・管理することによって,生産活動の最適化を図るシステム」である。
FAとの違いは,おおまかには@CIMがFAを包含する。AFAは「現場+製造スタッ フ迄」で、CIMは「経営トップ迄」と考えて頂ければ良い。

「DCS」:Distributed Control System
分散制御システム。プロセス系制御システム(化学プラントなど,温度や原材料の配合等 を制御する事によって製品を作るシステム)において、1台のコンピュータで集中制御するのではなく,複数台のコントローラを分散配置しそれを統合化することによってプラント全体の制御を実現するシステム。
多くのメーカから各種コントローラのユニットが供給されている。

「FA」:Factory Automation
JISによると「工場の生産機能を構成する要素(生産機器、搬送機器、保管機器など) 及び生産行為(生産計画、生産管理など)を統合化し、総合的に自動化を行うこと。」だそうだが、要するに自動化と情報化の両方が進んだ工場をイメージして頂ければ良いのではないか。

「FAコンピュータ」:FA Computer
一般のOA用コンピュータをベースに,RAS機能等を強化したもの。
頑強な筐体,防塵構造,RAS機能のボードへの組み込み,高価格(OA用に比べて), 具体性に乏しい一般(OA用)コンピュータとの信頼性のスペック差などが特徴である。 デスクトップ型,パネルコンピュータ型,ボード型,スロット型等がある。

「(FA用)HMI」:Human Machine Interface
JISでは「人間の操作と機械の動作をスムーズに結合するために使用されるハードウェ アとソフトウェア」とあるが、一般にOAではコンピュータ端末,FAではタッチパネル式の表示器やパネルコンピュータ(通称パネコン)のことを指す場合が多い。

「IDシステム」:ID System
JISでは「生産活動に利用するために,人又は物体の属性情報を記録し,認識するシステム」とあるが,バーコードリーダやデータキャリア(無線等の受発信機能とRAMを内蔵する小型の電子回路を樹脂などでモールドしたもの)のアンテナでワークや作業者の情報を読みとって,これを情報システムに入力すると考えてもらえばよい。

「PLC」:Programable Logic Controler
JISでは「PC」(パーソナルコンピュータとどう区別するのだろうか)。
JISの説明は皆さんにはわかりにくいので省略。
各種メカニズムやセンサ,アクチュエータなどの入出力に対し,順序操作や限時,論理演 算等の制御をおこなう制御装置。
これでもわかりにくければ、「制御用途に特化されたコンピュータの一種」くらいに考え ておいて下さい。(でも普及はパソコンよりも早い時期でした)

「NC」:Numeric Control
直訳すれば,数値制御。一例を挙げればわかりやすい。
たとえば、コンピュータ(コントローラ)から「X500Y250T101」という命令 を出せば、機械が原点からX軸方向に500(通常はmm)Y軸方向に250の位置に,101番のツール(工具)による加工(穴あけ等)をおこなう,というものである。

「POP」:Point of Production
JISでは「生産現場で時事刻々に発生する生産情報を、その発生源(機械・設備・作業 者・ワークなど)から直接に採取し、リアルタイムに情報を処理して,現場管理者に提供すること、又はその判断結果を現場に指示すること。」
まあ、言うなれば「POS(Point of Sales)」の製造業版である。

「SCADA」:Supervisory Control & Data Aquisition
パソコンをベースに各種入出力ボードを組み合わせて,データ収集及び装置制御をおこな うシステム。ソフトウェア上は,最近ではパッケージソフトをベースにカスタマイズするやり方が主流である。

「アクチュエータ」:Actuater
駆動機器類の総称。モータ,シリンダー,ファン,ポンプ,バルブ等を指す。

「(FA用)画像処理装置」:Image Analizer,Machine Vision
FAでは,ワーク(製品)の位置や形状,色などを検出・デジタル処理し、主として製品 検査や位置補正の自動化に使われる。
構成はCPU部(パソコン等),表示部(CRT等),検出部(CCDカメラ等)となっ ている。
OAのマルチメディアの普及はここ数年だが、FAにおいては私の記憶では1985年頃 には,既に電子部品の実装装置に挿入位置補正用の画像処理装置(当時はモノクロ)が取り付けられていたのを覚えている。

「サーボ機構」Servo-Mechanism,Servo-Controler
速度、角度、位置、姿勢などを規定値に保つように構成された制御機構。複雑な動きをす るロボットや加工機の大半はサーボ機構を備えている。また,身近なところではVTRのテープ送りにも用いられている。

「センサ」:Senser
JISでは「対象物の物理量を検出し、その値に対応する信号に変換する素子又は機器 」。「検出する物理量」の例としては,位置や温度等,最近では色や距離まで検出ものがある。「対応する信号」は通常,電気信号である。
非常に種類が多く文字通り「千差」万別である。

「フィールドネットワーク」:Field Network
FA機器間の制御に関わるデータのやり取りは,タイムクリティカル,ミッションクリテ ィカル性が重要であり、従来はDIOやAIOが用いられてきたが,Ethernet等のOA系LANでは対応できなかった。
しかし,ここに来てこれらが改善されたものが続々発表されている。ただし国・地域やベ ンダーの思惑が交錯し,Devicenet,Interbus,Profibus等,数種の「デファクト」が混在しているのが実状である。

他の用語について知りたい方は,JIS用語集などを参照されたし。JIS用語集でもわ かりにくい場合は,他のFAシステムの文献を参照せれたいが,この分野の素人向け入門書というのは非常に少ないのが実状です。

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